2013年2月17日日曜日

この子誰の子?「COME ON EVERYBODY」


今回は端々に音楽用語が出てきます。
今後、解説用の譜面や動画など随時追加していく予定です。

また「ココをもう少し分かりやすく説明しろ!」という箇所があれば
遠慮なく御申し出下さい。


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今回のテーマは

[「COME ON EVERYBODY」のリフの成立過程 ]




「Come On Let's Dance」のライブバージョンから
「COME ON EVERYBODY」は生まれたそうである。

いまどき小学生でも知っている常識だ。
何しろ曲を作った小室哲哉本人が言っているのだから間違いない


だが、本当にそうなのだろうか?

当ブログのスタンスとしては
公式発言を「参考」にはするが「鵜呑み」にはしない。
特に TM NETWORK に関しては(ニヤリ)

今回はよく取りざたされる、もうひとつの激似曲
「HARLIE GOOD-BYE」も交えてトコトン探っていこう。





----- はじめに -----



まず今回のテーマである「COME ON EVERYBODY」のリフ。
今回のエントリーでは前半2小節と後半2小節に分けて考える。
(クリックすると拡大します)










「HARLIE GOOD-BYE」についても軽く紹介しておこう。

この曲は TM NETWORK 名義ではなく、
当時のキーボード専門誌「KEYPLE」に
付録として小室哲哉が書き下ろしたものだ。

頭からイキナリ例のフレーズが鳴り響き
ほとんど「寸止め☆COME ON EVERYBODY」状態だ。

該当部分を採譜しようと思ったがやめた。
なぜなら上記の譜面、前半2小節と同じだから(笑)


単純に「小室哲哉の手癖?」とも思ったが、
少なくともポコ太には、これ以前のライヴなどで
同じようなフレーズを見つけることは出来なかった。


というわけで、ここでは「HARLIE GOOD-BYE」を
「COME ON EVERYBODY」の源流のひとつとして話を進める。





----- keyについて -----



さて「HARLIE GOOD-BYE」のリフと
「COME ON EVERYBODY」のリフ前半部が同じと書いたが
『音の形』は同じだが『key』は異なる

譜面の「COME ON EVERYBODY」場合、コードを付けるとすると {A-Bm} だが
「HARLIE GOOD-BYE」では {D-E} となっている。


注)「〜 EVERYBODY」が {メジャーコード → マイナーコード}
「HARLIE 〜」が {メジャーコード → メジャーコード} で
 違うじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし実際弾いている音形は『3度抜き』= ギターで言うパワーコードの為
 結果的に「メジャーかマイナーか」は関係なく同じ音になります。


(参考動画を作りました)




ここでのポイントは
「Come On Let's Dance」のライブバージョンで弾かれていたkeyは
「COME ON EVERYBODY」ではなく「HARLIE GOOD-BYE」の方と一致するのだ。

(「Come On Let's Dance」での該当フレーズは {D-Em} だが
 先の『注』でふれたように結果的に同じ音形となります)




この事を頭に置いて次に進もう。





----- 時系列から考える -----



次に「HARLIE GOOD-BYE」と「Come On Let's Dance」を時系列で見てみよう。


「HARLIE GOOD-BYE」と「Come On Let's Dance」は同じ1986年の作品である。
「Come On Let's Dance」のシングルは4月21日発売
「HARLIE GOOD-BYE」が収録された「KEYPLE」が発売されたのが8月。

発表時期から考えれば「Come On Let's Dance」の方が先に作られたのだろう。


しかし、ここで問題である「COME ON EVERYBODY」のリフは
「Come On Let's Dance」のライブバージョンにおいて
何時頃から弾かれていたのだろうか?


ライヴでこのフレーズが弾かれていた部分は
主に宇都宮が最後のサビを歌い終わった後、いわゆる「アウトロ」の部分だ。



・1986年・


86年春「Come On Let's Dance」発売直後のテレビ出演では
そもそもアウトロ自体存在しない。
サビを繰り返し、最後に宇都宮が "カモンレッツダンス" と叫んで
カットアウトで終わりである。


86年6月から始まる『FANKS DYNA-MIX』ツアーでは
ボーカルが終わった後、そのままサビの演奏を繰り返す。
ここで小室哲哉がやっているのは主にコーラスのサンプルフレーズの連打である。
(「カモカモカモカモカモカモカモカモ・カモンレッツダンス」ってやつネ )


その後、86年8月の『FANKS "FANTASY" DYNA-MIX』、この辺りのテレビ、ラジオ出演や
11月〜12月に行われたYAMAHAのイベント「X-DAY」等々、皆この調子である。


『FANKS DYNA-MIX』ツアー(中野サンプラザ公演)と
『FANKS "FANTASY" DYNA-MIX』の「Come On Let's Dance」は
それぞれDVD化されているので確認してほしい。


また、この時期にはもう1人、サポートキーボードとして白田朗がいるが
彼が例のフレーズを弾いている様子もない。

(この部分は今回のテーマの根幹にかかわる部分ですので、
 もし86年中に「例のフレーズ」を弾いていたことを
 ご存知の方がいらっしゃれば、是非コメント欄よりお教え下さい)




・1987年前半・


87年春の『FANKS! BANG THE GONG』ツアーではアウトロのアレンジが変わる。

サビを歌い終わった直後にいったんブレイクし
ドラムと打ち込みのコードシーケンスだけになる。
この部分が8小節続いた後、キメのフレーズを挟み
いよいよ例のフレーズを弾きはじめる。

(余談だがライヴの盛り上げ曲で、歌が終わった後に一旦落とすというのは
すごく勇気のいるアレンジだと思う。
この時期、それだけライブに自信がついてきたということだろうか)



時系列に戻ろう。

87年初頭に重要な出来事がある。
87年1月頭から2月頭まで続いたヤマハの『Super DX Formation』である。
メンバーは小室哲哉、西村麻聡(Bass)、山田亘(Drum)の3人。

ここで小室哲哉は丸一ヶ月間、平均3日に一度の頻度で
「HARLIE GOOD-BYE」を演奏しているのである。
この事を念頭に以降をお読みいただきたい。


(なんか文章だらけで殺伐としているので写真を置いときます)
『Super DX Formation』にて例のリフを弾く小室哲哉氏



























2月中旬
ツアーリハーサルが行われる。
(ゲネプロ=最終の通しリハは3月上旬)



2月終わり
ツアー直前のこの時期、「Self Control」のプロモーションとしてテレビ出演。

「Come On Let's Dance」を演奏したものとして、ポコ太が確認できた限りでは
『オールナイトフジ』また、収録時期がほぼ同じと思われる
3月放送の『Live TOMATO ’87』と『POPS探偵団』があった。

これらは全て『FANKS! BANG THE GONG』ツアーの
アウトロ・アレンジになっており、すべて例のリフ前半2小節を弾いている

ただ完全に固定化した形ではなく、リフ前半2小節をネタにアドリブしているような感じだ。
また後半2小節は完全なアドリブであり、まだ「COME ON EVERYBODY」の影は見えない。
(『Live TOMATO ’87』では入りの小節数を小室哲哉が間違えたようで多少グダる)



次に3月〜5月まで続いた『FANKS! BANG THE GONG』ツアー
このツアーの記録は公式、非公式を問わず皆無に等しいのだが、少なくとも
4月頭の浦和市文化センターでは先のテレビ出演と同じ演奏スタイルだ。



6月の武道館公演『FANKS CRY-MAX』も同じアレンジ。同じ演奏スタイル。
(CD「TMN GROOVE GEAR 1」収録の「COME ON LET'S DANCE [LIVE VERSION]」
 というのがこの時のものなので確認してみてください)

さらにこの時の演奏ではリフ前半部を弾いた後、
最後にコードの転回形(※解説用譜面をUPする予定です)を使い
3和音で弾いている。(CDでは 5:23 あたりから)
これは『Super DX Formation』の「HARLIE GOOD-BYE」でも行われていたものだ。
これも単なる「手癖」にも思えるが、この手法はポコ太が確認できた限り
後述する『kiss Japan』ツアー以降の「Come On Let's Dance」では見当たらない。



以上、少ない資料ではあるが87年前半の演奏では4小節パターンの中で
前半2小節はリフ前半を元にフェイクを入れた演奏
後半2小節は完全アドリブが定番だったようだ。





・1987年後半〜1988年・


しかしその後、87年暮れから88年に至る『kiss Japan』ツアー
及び88年3〜4月の『KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX』では
このリフを弾く場合と弾かない場合とに二極化する。


具体的には
A. 例のリフ前半部を弾く。
B. 通常のシンセソロらしいソロを弾く。
C. 通常のソロで始まり途中から例のリフ前半部を弾く。
の3パターンが混在している。

ただAパターン、Cパターンの場合、リフ前半部がアドリブを入れず固定化しはじめ
また、かなりリフ後半部に近いフレーズが顔を見せ始める




87年12月下旬の京都会館第一ホールでは、若干リズムが違うが譜面3小節目にほぼ近い状態。


88年2月頭の静岡市民文化会館ではCパターン、
しかし先の京都会館より先祖帰りしており、3小節目以降はリフ後半部には遠い状態。


ツアー最終日、88年2月末の千葉県文化会館はBパターン。例のリフは全く顔を出さない。


『kiss Japan』ツアーと『KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX』の間に収録され
3月に放送された『Live TOMATO ’88』でも Bパターンであり
「COME ON EVERYBODY」らしいフレーズは一切弾いていない。


3月終わりの『KISS JAPAN DANCING DYNA-MIX』大阪公演2日目では
Cパターンであるものの、リフ後半部を含む
完全な「COME ON EVERYBODY」のリフが姿を表した




8月25日
初の東京ドーム公演『STARCAMP TOKYO』


11月17日
「COME ON EVERYBODY」発売





----- まとめ -----



まとめよう。ポコ太の考えはこうだ。

86年「HARLIE GOOD-BYE」にてリフ前半部分が誕生。
         ↓
しかしこの時点では「Come On Let's Dance」と結びつかない。
         ↓
87年初頭の『Super DX Formation』によって「HARLIE GOOD-BYE」を
何度も演奏するうち、小室哲哉の頭に「HARLIE GOOD-BYE」のリフが残る。
         ↓
その影響で87年前半のライブ等では「HARLIE GOOD-BYE」のリフを元に
「Come On Let's Dance」のアドリブフレーズの一部としてよく弾いた。
         ↓
しかし6月の武道館公演『FANKS CRY-MAX』を最後に
しばらく「Come On Let's Dance」の演奏する機会が無くなる。
この間に「HARLIE GOOD-BYE」のリフの印象が薄れる。
         ↓
そのため87年暮れから始まった『kiss Japan』ツアーでは
例のフレーズを弾く頻度が下がる。
         ↓
が、今までに無い長いツアーの途中でたまたま弾いた
3小節目以降のフレーズが次第に固定化していき
小室哲哉の中で『前半2小節は固定、後半2小節のアドリブ』というパターンが
4小節でひとつの『リフ』に変化していく。
         ↓
「あ、これで一曲作れるんじゃね ?!」
         ↓
オケを製作中、ボーカルに合わせkeyを変更。
         ↓
「COME ON EVERYBODY」誕生。




つまり「COME ON EVERYBODY」のリフは
前半2小節は「HARLIE GOOD-BYE」
後半2小節は『kiss Japan』ツアーの
「Come On Let's Dance」が源流なのではないか。


生みの親が「HARLIE GOOD-BYE」
育ての親が『kiss Japan』ツアーの
「Come On Let's Dance」とも言えそうだ。



さて、みなさんはどう思いますか?



なお88年8月の東京ドーム公演『STARCAMP TOKYO』では
リハーサルも含め、はっきりと譜面の3小節目まで弾いているが、
この時点ではもうアルバム「CAROL」がレコーディング中であり、
小室哲哉としては「COME ON EVERYBODY」そのものを弾いていたのだろう。







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さて今回はいつもにまして長文となってしまった。
次回は通常のエントリーはお休みさせていただき、
今回のエントリーを含む、いままでのエントリー全ての譜面を音声化するつもりです。
その他、譜面や簡単な音楽用語解説も追加する予定ですのでお楽しみに。


んじゃ、また。








6 件のコメント:

  1. マニアックなブログ発見して嬉しいです!
    今後も楽しみにしています!

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  2. youさん。

    こんな脂ぎった妄想の地に
    わざわざ御越し頂きありがとうございます。
    ポコ太の妄想ネタはまだまだありますので、
    まったりと生温かく見守ってくださいネ。

    返信削除
  3. すばらしい考察ですね!私もそう思います。
    コード進行から見ても両者の関係性は深いですよね。
    メージャーキーで考えるか、マイナーキーで考えるか難しいところですが、仮にマイナーキーで考えるとしたら
    「Come On Let's Dance 」の該当部分のコード進行は
    Em(Ⅰm)→G(Ⅲ)→D(Ⅶ)(E minor Key)
    となり、一方「COME ON EVERYBODY」は
    Bm(Ⅰm)→D(Ⅲ)→A(Ⅶ)(B minor Key)
    で、まったく一緒なんですよね。
    ポコ太さんの考察のように、「HARLIE GOOD-BYE」のリフを「Come On Let's Dance」のコード進行上で弾いていくうちに「COME ON EVERYBODY」のリフが固まっていったと言えるかもしれませんね。

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  4. 匿名さま
    ていねいに解説いただき、ありがとうございます。
    思わず鍵盤で確かめてしまいました。

    まぁ、ここまで長文を書いといてなんですが
    本人に一言「違うよ」って言われたら
    おしまいなんですけどね。

    でも、Beatles や YMO がそうな様に
    TMにも深読みをさせたくなるような魅力があると思っています。

    今後もいろんな妄想を爆発させていきますので
    よければお付き合いください。

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  5. あった あった

    音楽に興味がなくても「COME ON EVERYBODY」が弾けちゃう
    かもしれないポコ太の泉

    まず、大掃除の度に「私、捨てられちゃうの?」と
    ビクビクしてるRollin' Pianoを取り出して

    Aメジャー Aマイナー
    そして 「COME ON EVERYBODY」の最初のリフの音

    それから ・・・はじめに・・・に戻って

    数十分経過


    ひ、弾けたぁ〜 (かなりアヤシイけど)
    右手だけだけど (左利きなのに)

    なんだか手が痛いけど、
    ポコ太さま ありがとうございました

    あ、夕飯の時間すぎてる!
    お母さん いれてぇ〜

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    1. 「気になっていた他のエントリー」って、こんな僻地まで来てたんスか!?
      しかもRollin' Pianoまで装備して。
      ポコ太、感激のあまり「TIME TO COUNT DOWN」を踊っています。
      (この表現はイメージです。実際の様子とは異なります)

      ホント、分からないところがあったら気軽に尋ねてくださいね。


      >>ひ、弾けたぁ〜
      やったー!これはワールドツアー決定ですね!!
      凄いなぁ〜。

      あ、お土産は辛子明太子かカピバラでお願いします。


      >>なんだか手が痛いけど、
      気をつけてください。
      一度痛めたら一晩では治りませんよ。もう、若くな…ウッ(吹き矢)


      >>あ、夕飯の時間すぎてる!お母さん いれてぇ〜
      おや?あんた、お隣の玄関先で何騒いでるんだい?

      削除